蜜心

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週末。 定時後に彼女の姿を部署内で探す。 葉沼のデスクはいつもの様にキレイで。 ホント几帳面だな。 デスクを眺めながら自然と出てしまう笑顔に唇を引き締める。 隣でまだ仕事をしているヤツに声をかけてみる。 「なぁ、小嶋。 葉沼は?」 「あ?」 俺を見上げると 「あぁ、たった今帰ったと思うけど。今日は仕事早く片付いたって言ってた。」 直ぐに書類に向き直る小嶋に軽くお礼を言うと内心舌打ちをしながら部署を出た。 やられた! 逃げられた! 足早にエントランスに向かうと、1人会社を出て行く後姿を見つけた。 その背中をちぃせぇなぁなんて見つめながら足早に近づいていく。 駅の改札に入る前に 「葉沼!」 と声をかける。 小さく驚き振り返った葉沼に 「お前、なに帰ってんの?」 「えっ?」 思いのほかイラついた声になっている事に内心驚きながらとりあえず一緒に改札を潜った。 隣に並ぶ俺に緊張を隠せない葉沼に、小さい彼女と視線を合わせるように体を屈めた。 「なぁ?週末メシの約束したよな?割り勘でって」 ニッと笑ってやると葉沼は冗談だと思ったと困ったように笑った。 ホームに滑り込んできた電車に 「冗談じゃなかったんだな。帰り危ないからお前ん家の方で食うか。」 と背中を優しく押して乗り込んだ金曜、6時過ぎの電車。 この時間の車内はやっぱり混んでいて、自然に体が密着する。 俺は何気ない風を装って。 あくまでも自然に見えるように。 人混みから彼女を守った。 葉沼の方に顔を寄せ彼女特有の匂いに胸を締め付けられながら小さな声で囁いた。 「なぁお前家の方で旨い店とかあんの?出来ればチト酒もあるとありがたい。」 近くなった2人の距離に淡く頬を染め。あからさまに顔を背け 「美味しいかはわからないけど、好きなお店は駅前にあります。」 「なら、そこ連れてってよ。」 「はい」 笑った顔はやっぱりキレイで可愛かった。
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