蜜心

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「お前良い店知ってんだな」 なかなか洒落た店に少し驚いた。 夜空を連想させるような深い蒼。 淡い光で数種類のサイズの照明がランダムに吊るされているのが、夜空に瞬く星に見えた。 1面ガラス張りの店内はテーブル席よりも外を見渡せるカウンター形式のほうが多くて 店内から見渡す景色と同化しているようで幻想的だった。 「そうですか?大学の頃から住んでるからかな?」 首を傾げながら、奥の席に着くとバーテンがおしぼりを持ってきた。 「久しぶりだね。何にする?」 「ありがとう。江藤さんは?何にします?」 「そうだな、ハイボールにするかな」 「じゃあ、ハイボール2つね」 了解!とカウンターの中に戻りハイボールを運んでくると 「ゆっくりしてって」 と笑顔で離れていった。 お疲れとグラスを軽く合わせるとお疲れ様です。と微笑んだ。 何か特別な事を話す訳でもなく、くだらない話をした。 隣り合わせて座る彼女と体を動かす度に微かに触れ合う。 「あっ、すみません」 椅子を俺から少し離して座り直す。 そんな当たり前の行動なのに俺は葉沼に視線を向け直ぐにグラスを見つめる。 そんな情けない感情を隠しながら、葉沼が笑顔になる様な話を続けた。 そのうち笑顔が増え、ちょっと好奇心もあり聞いてみた。 「なぁ?お前って片思いのヤツにいつから惚れてんの?」 酔いもあるのか葉沼はグラスの水滴を指でなぞりながら 「んー、大学の頃?…かな」 「ふーん。で?」 ガラス張りの深けた空を見つめながら 「で?って?」 なんとなく葉沼を遠くに感じながら 「告白なんかした?」 「アハハっしませんよ。ずっと彼女いるし」 そっかっと相槌を打ちながら、少し酔ったのか艶っぽく瞳を潤ませ 儚げに微笑む顔を見ていると自分に少なからず信用があるのだろうか。 なんて…。
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