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その兄が珍しく、私の質問に激昂した。
「ほんと、嫌になる。野里なんて名前が原因で、俺がどれだけ苦労をしてきたか!」
本当なの? むしろ、漫才師なんだから、覚えやすい名前でラッキーじゃないの?
「苦労ってどんな?」
「あのさあ。俺くらいの年になると、付き合っている女の子も俺との結婚を意識するわけよ」
「それは私だって同じだよ」
「前に付き合っていた子、覚えてるか?」
「うん。のりちゃんだね」
「おいっ!俺と結婚したら『のり・のり』だぜ!」
あはっ。ほんとだ。気がつかなかった。
「お前に秘密にしていたけれど、その次に付き合った子な」
「うん」
「麻紀ちゃんっていうんだ」
へっ。ああああ。『のり・まき』だっ!
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