4人が本棚に入れています
本棚に追加
「千代さんが……留学?」
三月二十一日、午後八時に突然掛かってきた電話。
その相手は、中学校を卒業してから、全く会っていない女の子だった。
そのこと自体にも驚いたけど、彼女から伝えられた事実は、僕を更に驚かせた。
「それって、本当なの?」
『はぁ、やっぱり知らなかったんだ。
中学卒業してから連絡も取ってない、って本当だったんだね』
「う、うん」
僕と千代さんとは、全く接点がなかった。
その理由は良く解っている。
痛いほど理解している。
全部僕が悪いんだ。
僕が意気地なしだったから。
『とにかく、あの子の携帯の番号とメアド教えてあげる。
メモって』
「えっ、お、教えてもらっても、僕どうすれば……」
『はぁ、健太くん、ホント変わってないね。
取り敢えず連絡してみれば。
多分、連絡しないと後悔するよ』
「うん、解った……」
僕は、教えられた千代さんの携帯電話の番号とメールアドレスをメモして、電話を切った。
切った後、お礼を言い忘れたことに気付き、少し後ろめたい気持ちになる。
最初のコメントを投稿しよう!