Boy's scene 1

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 僕は自分の携帯電話に、千代さんの番号とメールアドレスを登録し、そのまま待ち受け画面を見つめ続けた。  僕には、千代さんと初めて会ったっていう記憶がない。 僕等の家が近所で、親同士の交流があり、同い年で誕生日も近いせいか、僕等は物心着く前からお互いを知っていた。 そして僕等は同じ幼稚園に通い、同じ小学校に通い、同じ中学に入学した。  仲は良かったと思う。 と言うか、活発な彼女が、内気な僕を引っ張ってくれていた。 そうすることで僕達の関係は成り立っていた。  だけど、中学校を卒業してから、僕達は顔を合わせていない。  気付くと、時計の針は午後十時を回っていた。 これ以上遅くなると、電話しても迷惑になるな。 じゃあ今日連絡するのはやめようかな。 でも、今日出来ないと、多分明日も出来ない。 電話じゃなくてもいいんだ。 メールなら、それ程気負わなくてもいい。 だけど、僕は文章書くの苦手だし。  駄目だ駄目だ。 こうやっていつも決断出来ないから、僕はチャンスを逃すんだ。 すぐにこれからの行動を決めよう。 電話する。 メールする。 今日は連絡しない。 選択肢はたった三つじゃないか。 この中から選ぶだけ。 さあ選ぶぞ。
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