Boy's scene 1

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 って簡単に選べていたら、きっと僕はもっと違った道を歩んでる。  電話は緊張する。  メールは文章を考えるのが苦手だ。  出来れば今日連絡するのは控えたいけど、そんなことしてたら、きっといつまで経っても連絡出来ない。  僕は携帯電話を握ったまま、ベッドの上で悶々としていた。 視線をさまよわせ、部屋の中のあらゆる物を見る。 あまり物は多くない。 四畳半の部屋。 小さなベッド。 小さな机。 机の上にはパソコンのモニタ。 机の下には引き出しと、パソコンの本体がある。 そして、この部屋で唯一大きいのが本棚。 本棚なのに、そこにはテレビが備え付けられ、ゲーム機も納まっている。 一応本も収納してある。 漫画のコミックが半分。 小説が三分の一。 残りが受験勉強で使った、参考書や問題集だ。 その問題集の一つ、【物理】と書かれた背表紙が目に入った。 確かアインシュタインだったかが、こう言ってたな。『神はサイコロを振らない』って。  僕は起き上がり、机の引き出しを開けると、サイコロを探した。 サイコロはすぐに見つかった。 僕はそれを握り締める。  僕は神じゃない。 だから僕は、これからの自分の行動をサイコロに委ねよう。 どんな目が出ても、決してやり直さずそれに従う。 こうすれば意志薄弱な僕でも、行動できるような気がする。  さあ、サイコロを振ろう。 僕はサイコロの目に、自分の行動を割り振った。 1、2 電話をする 3、4 メールをする 5、6 今日は連絡をしない  これで恨みっこなし。 僕はサイコロを放り投げた。 出た目は2。 電話か。 よりにもよって、って感じだ。 だけど決めたことだ。 僕は覚悟を決めて、登録したばかりの番号に電話を掛けた。
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