さようなら平和な日常、こんにちは重労働

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 ここはいったいどこなのだろう。まわりは無機質な白い壁に覆われ、物はいっさい置かれていない。 「ここはどこ?俺は誰?」  ・・・言って後悔した。ベッタベタなセリフを言ってみたけど虚しいだけだった。 「てか、俺名前覚えてんじゃん・・・。なんで言っちまったんだ・・・」  激しく後悔していると、突然どこからともなく声が聞こえてきた。 《へい!そこな青年!元気してるー?》  子供っぽいような大人っぽいような、男性のような女性のような、不思議な声だ。そしてめっちゃフランク。元気してるもなにも、この状況で何言ってんだ。 《まいねーむいずごっど!神様だよ!》  ・・・幼稚だ。そして英語言えてねーし。 《私は君を転生させるために居る!》 「・・・は?」 《名前、塔跡煉雅。身長178cm。体重57kg。職業無職。高所恐怖症・・・か。うん、完璧な人材だ。神様さすが!天才!いっかすーう!!》 「いったいなんのことだよ?てか、なんで俺の個人情報知ってんだよ?」 《では、いってらっしゃい!健闘を祈る!》 「は?ちょっと待て!いきな・・・うわっ!?」  抵抗するまもなく、俺は神様に勝手に飛ばされたのだった・・・。 「うーん・・・ん?」  ・・・目を覚ますと、そこはあばら家だった。太陽の光が差し込み、俺を照らしている。 「ここは・・・どこだ?」   周りを見渡してみると、薪ストーブにヤカンが置かれている。その隣には鉄製のフライパンとフライ返し。薪ストーブの近くには薪が積まれている。俺の寝ている場所は錆の浮いたボロいベッドのようだ。 「なんでこんなところに・・・。とにかく、起きて状況を・・・」  立ち上がろうとしたとき、カサッという乾いた音が聞こえた。手に何か触れたようだ。 「なんだこれ?・・・手紙?」  羊皮紙の手紙には、こんなことが書かれている。 --この手紙を読んでいる頃には、私はお前のそばには居ないだろう。幼いお前を置いて出ていった私を許してほしい。私には、どうしても行かねばならない場所があった。そこに待っている謎を解き明かしたくて、私はお前のもとを去ったのだ。 お前に伝えることがある。バベルの塔、空中庭園を目指してほしい。私はそこで待っている。 インディー・ボーグナイン-- 「・・・どちらさま?」  てか、幼いってなんだよ。俺はもう成人だぞ。それに、バベルの塔ってどこだよ。 「赤の他人にこんな手紙残していくとか・・・」
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