さようなら平和な日常、こんにちは重労働

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 誰か説明してくれ。どういう状況なんだ。 「はぁ・・・めんどくさ」  面倒くさいことに巻き込まれたもんだ。インディーなんちゃらのことは全く知らないし、バベルの塔がどこにあるのかもわからない。 「ん?2枚目あったのか」  手紙にくっついていたようだ。  2枚目には、地図が描かれている。バベルの塔までの道程のようだ。 「・・・行かなきゃ駄目・・・か。インディーなんちゃらさんが待ってるらしいしな・・・」  身一つで塔を登るなんて愚の骨頂だ。せめてなんか装備でもあればいいんだが・・・。 「なさそうだな。買うしかないか・・・って、金あんのか?」  手当たり次第に金を探してみたが、1円もない。この世界の通貨を知らないが、それっぽいものもいっさいない。 「どうしろと・・・」  本当に身一つで登らされるようだ・・・。 「くっそー・・・恨むぞ神様・・・」  何も言わずに勝手に転生させやがって・・・。 「はぁ・・・こうしてても仕方ないし・・・行くか」  重い足を引きずって、地図に描かれた塔を目指すことにした・・・。  あばら家からバベルの塔までの道程はさほど遠くなく、緩やかな一本道をただひたすら歩いただけで辿り着いた。 「・・・・・・こんなとこ昇れと・・・」  目の前にそびえている塔は、見上げると首が痛くなるほど高い。 「なんでこんなところに登ろうと思ったんだよ、インディー・・・」  高い所が苦手な俺にとって、これは拷問に近い。バベルの塔の空中庭園は、おそらくこの塔の頂上だろう。そんなところに庭園造ろうなんてバカなこと言い出したのはどこのどいつだ。 「帰りてえ・・・。てか還りてえ」  還れたらどれ程いいか。俺は転生させられたのか知らない。この世界がどういう世界なのかも知らない。この塔になぜ登らされるのかも知らない。知らない事だらけのこの状況で、塔を登らされる苦行・・・耐えられる自信がないぞ。 「・・・行くか」  心底嫌だが行かないと、俺は一生あばら家生活だ。それだけは避けたい。 「インディーに会って文句言ってやる・・・」  そのくらい許されるはずだ。許してほしい?許すわけねーだろ。こちとらわけわかんねー状況で、苦手な高い所目指してやる義理はねーんだよ。金もない、装備もない、助けてくれる人も居ない状態で登ってやるだけありがたいと思え。 「絶対に許さんぞインディー」  苦手な場所にボッチで登らされる俺の身にもなれ。
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