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でも、この密室で逃げられるはずも無かった。
「あ、こんなところに。えっ、どうした?」
菅谷くんが私の目の前にしゃがみこむ。
見つかってしまった。どうやってもいい嘘が見つからない。とっさにそばにあった本を手にとった。
「さっき菅谷くんが、誰かと話してたから、邪魔するのも悪いかと思ってこれ読み始めたらもう、感動的すぎて号泣しちゃった」
「その本で?」
手元を見ると、昆虫記だった。
「えっと…」
「嘘でしょ。今の。」
菅谷くんがふわりと微笑む。
「うん…」
「もしかしたら、だけど…俺が好きな人いるって言ったの聞いたから?」
「うん…でも気にしないで私が勝手に想ってたことだから」
彼が真っ直ぐな目で私を見た。
「あの、俺の好きな人波田さんなの」
「え…?」
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