白狼の里降り

2/9
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/56ページ
月日は絶えず流れる。 紅霧異変と呼ばれる吸血鬼レミリア・スカーレットによる異変が解決して、2ヶ月がたった。 活発に動いていた妖怪や賊共は掃除されて、人里では平和な日常が戻っていた。 巫女稼業を解決3日後には再開した霊夢は日の出前に目を覚ました。特別今日が早いわけではなく、いつもの、謂わば習慣だった。 眠気の残る頭を揺さぶりながら布団を畳み、縁側から外に出る。側には井戸があり、霊夢は滑車から伸びる紐を引っ張り釣瓶を巻き上げる。 井戸水は外気の影響を受けない為、温度がほぼほぼ変わらない。 今の季節では少し冷たい程度だ。しかし、眠気眼には丁度いい。つまり、眠気覚まし兼お清めだ。 白の寝間着が濡れた。 肌に張り付き霊夢の健康的な体が透ける。 お清めを終えた霊夢は用意しておいた手拭いで体の湿りを取り除く。居間に戻りいつもの巫女服に袖を通す。 肩甲骨まである髪は手拭いによって頭に纏められている。 炊事場に行き米を研いで炊く。 炊き上がりまでの少しの時間に炊事場の掃除と居間の布団を片付ける。 炊き上がるまでの30分ほどの間炊事場と居間を往来し、遂にコメが炊き上がった。 そこから更に10分ほど蓋をしたまま蒸す。その間に昨夜のうちに仕込んだ煮物に火を付けた。 暫くして居間の卓袱台の上には炊きたての米と温め直した煮物が並んだ。 最後にお茶を沸かして終了だ。 特に普段と変わらない、つまりは日常の風景だ。 霊夢は誰かに教えられたわけでもなく、躾けられたわけでもなく一人で博麗神社に住んで管理をしている。 「今日は確か白狼天狗が里に来る日だったわね。早く支度して里に降りないと」 煮物の中から筍を取り出す。妹紅から貰った物だ。 煮汁が中まで染み込んで中々に美味だ。本当は刺身にして食べたかったのだが、日にちが開いてしまっては無理だ。 ふと外を見た。 日はいつの間にか大地から飛び出し照らし始めていた。 平和な朝だ。 この様な朝が続けば、などという言葉を心に鎮め、食事を再開した。 鳥の囀りが聞こえた。
/56ページ

最初のコメントを投稿しよう!