KETUI イチョウの木の下で

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 計画性もなく、妊娠してどうするんだといわれるんじゃないかと思っていた私は、父の言葉に驚いた。  「でも三人って、お金かかるし。大変だし......」   そんな 私の言葉に、父はハハハっと、笑い声を立てた。  「大丈夫や。絶対大丈夫。子供は自分の食い扶持は 持ってうまれるんやて。」   え......   驚いている私に父はさらにこう言った。  「昔から子供は『自分の食い扶持は、背負って生まれてくる』って いうし 父さんも お前たち育てながらそうだった。だから心配する必要なんてない。  子供 天からの授かりものや。とにかくおめでとう。お前は体に気をつけてな。 あとはどうにでもなる。」  父の 言葉が ぐっときた。  胸が熱くなって 涙が ポロポロと流れた。  父が心配すると思い 「また電話する」と言って、 電話を切った。   父の言葉が心に染みた。乾いた土がバリバリに乾いて ヒビがいって......。そんな私の心に 父の言葉が染み込んでいった。   痛くて痛くて 針金で心が締め付けられているようだったのに それが無くなって、心が暖かくなった。  顔をあげた私の目の前に、イチョウ並木が 続いている。 さっきまで寒かったはずなのに、頬に触れる風が心地よかった。  イチョウ並木の下に、落ちているいちょうも黄金色に輝いていた。   ー子供は自分の食い扶持は、背負って生まれてくる  そっか 確信なんてないのにね   でもなぜかこの言葉が、私の心に確信となって落ちた。   とにかくやるきゃね。   三人のママだもんね。   誰がこの子を守るの。ママの私が守らなきゃ。 この子が、自分は愛されるため産まれてきたんだって思えるように  そう心にグッと思い、私は向きを変え、来た並木道をもう1度歩きだした。  イチョウの葉が、風に煽られ綺麗に舞った。
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