KETUI イチョウの木の下で

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 line電話? 父から?  三年前にインド工場の工場長になった父は、60歳過ぎても現役バリバリだ。母も父について インドに住んでいる。  その父からの 電話だった。  「美智代 元気か?」  「うん お父さんも」  「日本は寒いだろう。こっちは25度くらいで ええ気温だぞ」  「お母さんも元気?」  「ああ、母さん冷え性だけど、こっちは寒くないから私にちょうどええわって、いってるぞ お前も元気か。」  「うん。」  海外に住む父に心配をかけたくない私は、何もなかったかのように精一杯平気なふりをした。   父は単身赴任が多く、家にいることも少なかった。口数の少ないほうだ。でもよく電話をしてくる。長くは話さないが、一人娘に対する父なりの愛情表現だった。  「今はいいなぁ、タダで国際電話もかけれるし」  「そうだね。ところでお父さん?」  「うん?」  私は三人目の妊娠について父に話した。  「おめでとう。おおお、めでたいなぁ。」  父がとても嬉しそうに、お祝いを言ってくれた。
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