思出話が終わり

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思出話が終わり

「あの時、なんであんなに涙が出たのかなぁって、時々考えるんだ。もちろん、悲しかったからだと思うんだけど、それだけじゃなくて、悲しみ以外の感情もあのときあった気がするんだ。それを思い出そうとすると、なかなか出てこなくて……」 僕は、あの時泣きながら笑った。 笑っている筈なのに、涙が止まらなくて、すごく不思議な気持ちだった。まるで、ソコに涙を置いていこうとしたみたいな…… 「あぁ、そうか。」 思い返してみると、あれから10年涙を流した記憶がない。 感動したり、思い切り笑ったときには涙は出るが、悲しみで涙が出た記憶がないのだ。 きっと、悲しみをその時にあいつに渡したのだ。 『悲しいときこそ、笑おうぜ』 何だか、あいつに言われた気がした。 辛いときこそ、いつも笑顔で乗りきってやる!と気合いをいれてがむしゃらに頑張れていた。 僕は多分、一生分の悲しみをあいつの元で吐き出したんだ。 そう考えると、何だか納得がいった。 「お前の分まで笑う約束だもんな」
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