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ホテル最上階のラウンジバー。
「どうしました?浮かない顔して」
なんでカウンター席選ぶかなあ。窓際とか端っことか。
「あっちの方が目立つと思いますよ。ここなら仕事で来てるってふうに見えるでしょ」
部屋で飲んでたらもっと目立たない。だんまりの俺に静かに、囁く。
「そのスーツ、似合う」
イケ面旦那には敵いませんがね。しかもこのスーツ。オソロだしな、生地。色が、俺のは黒に近くてセンセのは明るい青。細かいストライプが入ってる。
つり下げだが決して安くはない店で、購入。値札見る前に、センセが当たり前の如くカードでお買い物されました。
まあそれはいつものことだから。
ただ、な。
「誠、さっきの気にしてるんでしょう」
芸能人御用達らしいこのホテル。
さっきフロントで歌舞伎役者の方々に遭遇してしまい、中に一人熱烈なファンがいらっしゃっていきなり色紙出された。あ、差し出したのはマネージャーだが。それ、ファン用で普段はあんたが書くほうだよね、とツッコミ入れたくなった。
センセはサラリとお相手されていましたが、その時の俺の居心地の悪さ、わかるかなあ。俺も仕事柄、役者の顔は全てわかる、というか歌舞伎ファンなら黄色い悲鳴上げる役者ばっか。
さりげに俺のこと友人と紹介してたし。いや、俺もやったけどな、さっきは。
だが、先生だけでなく俺の仕事にも絡んでくるような相手に、友人てのはどうだよ。しかも常宿にしてるなら宿泊階言えばどんな部屋か想像着くかもだし。
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