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時は、小林葵がK校1年生の11月半ば、街はあちらこちらイルミネーションで彩られ、気が早いクリスマスムードに盛り上がっていた。
ファントムと葵が宿泊する都内高級ホテルのジュニア・スィートルームの中にも大きなクリスマスツリーがきらびやかに飾られ置かれている。155センチの葵の身長とさほど変わらない。
「葵……」
「んっ、んん……」
ファントムが葵の白く細い首筋に舌を這わせながら、その白い肌を手のひらで撫で回している。
愛していると言葉を交わした、あの日以来、ファントムは葵を『小林君』とは呼ばなくなった。
ベッドの上で愛し合う時には『葵』、それ以外の時には『葵君』と呼ぶようになり、初めて身体をひとつにした日から、2人は定期的に会うようになった。
絡まり合い2人の行為を終えると、葵がベッドで横になったまま思い出したように言う。
「ファントムあのね……」
「なんだい?」
「何だか最近家で変な事が起こるんです。大した事じゃないんですけど」
「どんな事だ?」
「僕の下着が無くなるんです」
「何だそれは。詳しく聞かせてくれ」
「洗濯しようとすると、ランドリーバスケットに入れたはずの下着が無い事に気付くんですけど、不思議な事に2、3週間すると、部屋のクローゼットの中に戻ってるんです」
「それは、君と兄貴の2人暮らしなんだから犯人は考えずとも解るだろう」
「兄さんがって事ですか? そんな訳ありませんよ。兄さんがそんな事をする理由が解りません」
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