9人が本棚に入れています
本棚に追加
「おい、葵、ファントムが予告状を出して来たぞ」
帰宅した兄のヒカルが開口一番、そう言った。
「えっ」
「こども園と言う児童養護施設に、毎年クリスマスプレゼントと称して多額の寄付金が送られてるんだが、クリスマスイブにその寄付金を奪うという話だ」
「まさか! そんなお金をファントムが奪う訳ないよ!」
「ファントムも落ちたもんだよな」
「何か理由があるはずだよ。寄付金って誰からの寄付金なの?」
「寄付金はアズマとそのグループ企業からだよ」
「アズマって、大手企業のアズマ? そのこども園とどんな繋がりが?」
「こども園の施設長とアズマの社長が旧友なんだ」
「そうなんだ、どういう事だろう……」
「葵、メシにしてくれよ」
「あっ、うん」
葵は夕飯の間、ずっとファントムが寄付金を奪う理由を考えていた。
「……葵」
「えっ、なに?」
ヒカルに声をかけられて、葵は少し驚く。
考え込んでいて、自分が食事中だった事も、兄を前にしていた事も忘れていた。
「お前、聞いてなかったな。クリスマスプレゼントは何が欲しいのか聞いたんだぞ」
「あ、ごめん。考え事してて。クリスマスプレゼントか。僕は何でも嬉しいよ!」
「リクエストがないなら、三つ星レストランで食事はどうだ?」
「もー! 何でも嬉しいって言ったんだから、わざわざ聞かないで、そこはサプライズにするものじゃない?」
最初のコメントを投稿しよう!