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葵は翌日、学校を早退してこども園の前に立った。
学校指定のピーコートを着て、手袋とマフラーをしているが、じっとしていると日中とはいえ冷えて震えた。
しばらくして、帰って来た小学校低学年らしき2人に声をかけた。
「ちょっといいかな? 聞きたい事があるんだけど。そこの公園でお話しない?」
「うーん、知らない人に着いて行っちゃダメって言われてるし……」
黄色い帽子をかぶった男の子と女の子のランドセルはよく見ると形は潰れ、色は薄くなり古ぼけている。
着ている服も真冬なのに随分薄着だ。
「そのランドセル、何か凄い年期が入ってるね」
「ネンキ?」
「長い間色んな人が使ってたみたい」
「うん、おさがりだよ。留める所が壊れてるけど、使ってるー。ほら」
「ホントだ。留め金の磁石が取れちゃって、ランドセルのフタがしまらないね。新しいのは買ってもらえないの?」
「使える物はもったいないから使いなさいって言われてる」
「でも、壊れてるじゃない」
葵がそう言うと児童2人は顔を見合わせた。
「ごめんね。お話はもういいよ。ありがとう」
2人を見送ると、葵は思った。
施設は大企業から寄付金を毎年貰っているのに、何で新しいランドセルを買ってもらえないのかな?
でも、使える物はもったいないから使いなさいって言うのも間違ってはいないよね。物を大切にさせるっていうのも教育だろうし。
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