母と娘

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佐藤は警察で自供し、そのまま逮捕となった。 稀に見る、残忍で身勝手な犯行だとニュース等で大きく報じられる事件となった。 「愛、おはよう。今日は御盆よ。愛はママの所には来てくれないかな」 夏の昼下がり、日の光が射し込む明るいその部屋に由里子は居た。 娘の仏壇の前で手を合わせる由里子は、穏やかな表情をしていた。 愛が殺された事件から、約1年が経った。 由里子は事件のあったアパートの、同じ部屋に戻って、1人細々と暮らしていた。 仏壇には、娘の写真、あの日かばんに入れられていた、赤い和柄の折り鶴、茶色い小さな袋の上には、その中に入れられていた少しカビた蒸しパンの写真が乗せてある。 由里子が折り鶴を手に取り眺めていると、折り目の一部に黒い矢印が書かれている事に気が付く。 「え・・・何?」 そっと、その鶴を広げて1枚の折り紙に戻した。 それは、まだ拙く幼い字で書かれた手紙になっていたのだ。
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