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14時。
仕事の休憩中。
同じ仕事仲間の女性と、休憩スペースで喋っていた。
「あら木下さん。鞄の中のそれ、何?」
財布やタバコ、お茶のペットボトルの隙間から輪ゴムで口を縛ってある茶色い袋が見えていた。
開けてみると、少しカビの生えている小さな蒸しパンが入っていた。
気が付かなかったが、きっと数日前から入っていたのかもしれない。
「あー。娘かも。きっとまた悪戯よ」
「悪戯ってよりも、お母さんにくれたんじゃないの?カビちゃってるみたいだけど」
「あの子、離婚して私が引き取ったから、私の事を憎んでるのよ。お父さんっ子だったから」
そう言いながら由里子はそのパンを袋に戻し、鞄に突っ込んだ。
「木下さん!そろそろ休憩終わりよ、仕事戻って!」
休憩所の向こうで同僚の少し怒った声が聞こえ、慌てて由里子は鞄をロッカーに放り込み、仕事に戻った。
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