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その日の夕方は、いつにも増して暑かった。
昼間の太陽の熱がアスファルトに残っているのだろう。
もうすぐ17時になるのに、自転車を漕いでいるだけで、額に汗が滲む。
由里子は、仕事終わりに店で購入した惣菜の袋を自転車の前籠に乗せ、自宅へ戻った。
駐輪スペースに自転車を停め、アパートの3階にある自宅へ行き、いつもの様に鞄から鍵を取り出し、鍵穴に入れて回す。
あれ?
鍵が開く時の、カチャリと言う音がしない。
ドアを引いてみると、鍵は開いていた。
「もう!鍵は閉めてねって言ったでしょ!!」
怒りながら靴を脱ごうと下を向くと、ピンクの玄関マットに赤いシミが付いていた。
「え、何?」
ふと見ると、ワンルームである部屋に続く廊下に、点々と同じ様な赤い液体が、ぽつぽつと落ちている。
「愛?愛・・・?!」
胸騒ぎがし、買い物袋と鞄を玄関先に投げ捨て、部屋に飛び込んだ。
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