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「ギィヤァァァァーー!!」
「あーもう、うるさい!」
「俺の……俺のレヴァスタのデータが……」
閑静な住宅街に夜の帳が降り、月明かりがふんわりと街を包み込む。
そんな静かな夜に響き渡る絶叫。コレが最近になってよく起きるこの街の日常風景だ。
悲鳴の主は私の双子の弟である新一。小さい頃は可愛かったのに、高校1年生である現在は重度のゲーマーであるから困りものだ。
さて、では私の弟は何故こんな夜更けに近所迷惑な悲鳴をあげたのか? 答えは簡単だ。ゲームのデータが消えたから。この現象が私の弟に至ってはよく起きる。短いスパンだと、週に2回も起きたことがある程だ。
その度に奇声にも似た断末魔の叫びをするから、本当に困っている。父と母もお手上げ。近所の人も最初は苦情を言ってきたが、最近は何も言ってこない。
しかし、1番辛いのは同じ部屋にいる私だ。高校生にもなって、姉と弟が同じ部屋に押し込まれているなんて、双子だとしてもあり得ない。我が家が貧困であるとか、そういうわけでもない。むしろ自慢じゃないけど多分、裕福な方だろう。
それならば何故? となるのだが、それはとりあえず置いておいて、まずはこの騒がしい同居人の奇行をどうにかしないと私の安息は訪れないだろう。
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