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「ねえ聞いた? 久手(ぐで)さん結婚したんだって」
女子トークの最中、その衝撃の言葉は突然私の元に降って来た。
「な、何ですって――――っ!?」
久手正弘――我が社のやり手営業マン。
その上、独身。金持ち。そしてイケメン……
だったのに!
だから狙ってたのにーっ!
「お相手は取引先との接待で知り合った人らしいよ。何とその名前が『のりたまこ』さん! あんたと同じ名前だね」
私は更に愕然とした。
よりによって私と同姓同名?
近くの『のりたまこ』より、遠くの『のりたまこ』を選んだと言うの?
そう、私の名前は『乃里多 真子』。
丸美屋のふりかけ『のりたまこ』と掛けられ、昔からずっとからかわれて来たものだ。
だから早く結婚して別の姓になりたかった。
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