いつもと違う目覚め

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 その日、俺は幼馴染の楓と一緒に学校から帰る途中だった。確か、二人で他愛もない会話をしていたんだと思う。内容は覚えていない。  横断歩道を渡っている時だった。一台のトラックが近付いてくる。おかしい。スピードを落とす気配が無い。運転席で突っ伏している男が見えた。あれ寝てるんじゃないか!?  気付いた時には、俺は楓を歩道の方へ突き飛ばしていた。轟音をすぐそこで感じた。 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」  事故の映像が生々しく甦り、俺は飛び起きた。俺はあの時、トラックに撥ねられて死んだんだ。死んでる人間が何故飛び起きたかって? 死んでみてわかったのだが、人間は死んだあと幽霊になっても、生きていた頃の生活習慣が抜けず、夜になると寝てしまうのだ。別に幽霊だから寝なくてよいのだが、いやはや、習慣とは恐ろしい。   だが、俺は今自分の身に起きている異変に気付いた。おかしい。なんだこれ。どうしてこうなった。幽体になったはずの俺に、 足 が 生 え て い る。  ちょっと待ってくれ。俺は幽霊になってフワフワと宙に浮かびながら、自分の葬式も見たし、俺の骨がお墓に入れられるところも見た。それなのに、今の俺はちゃんと地面に立っている。しかも、自分の足で。一体何が起こっている?  しばらく頭が混乱していのだが、急にゾクッと悪寒が走って我に返った。そういえば、まだ夜明け前だ。生身の身体では流石に寒い。辺りを見回す。ここは俺が事故で死んだ歩道じゃないか。服装もあの時と同じだ。
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