いつもと違う目覚め

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とりあえず、風邪を引きそうだったので、暖を取れそうな場所を探すことにした。一度死んだ自分が、風邪を引きそうという理由で行動しているのが、なんだか可笑しくて笑ってしまう。  それにしても、これは不味いんじゃないだろうか。なんたって死んで墓に埋められたはずの人間が、生き返ってその辺をウロウロしていたら、ちょっとした事件だ。いや、ちょっとしたどころの騒ぎじゃない。困ったことになった。俺を知っている人間に見つかる前に、身を隠さなければならない。 ◇  俺が死んだのはちょうど、一週間前。高校2年の夏休み前だった。学校では、そろそろ進路の話などが出始め、夏休みにオープンキャンパスに行く予定の奴もいた。幼馴染の楓は成績優秀で、陸上部では将来も期待されるほどの結果を出していた。  俺はといえば、成績は中の下くらい。部活も特にやってないから、放課後はよく、楓の練習を校庭の端から眺めていた。  両親は二人とも俺がまだ小学校に入る前に事故で死んだ。祖父母も既に他界していたため、俺はその頃から親戚の家で育てられることになった。養ってもらっているのが、なんとなく申し訳なく思い、なるべく周りに手間をかけさせないように生きてきた。面倒を押し付けれた。そう思っているようだった叔父も叔母も、俺が手のかからない大人しい子供だったことにホッとしていた。  学校では影が薄く、友達もほとんどいなかった。ずっと仲良くしてくれていたのは楓だけだ。
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