いつもと違う目覚め

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 俺の中で最も重要だったのは、周りに迷惑をかけないこと。だから、なるべく出しゃばらず、常に静かにしていることを心がけた。自分の主張など絶対にせず(というか、俺にはわざわざ主張するようなこともなかった)、常に物事が円滑に進むよう気を使った。  だから正直な話、俺は自分が死んだとわかった時も、それほど悲しいとも思わなかった。もともと生きていても、自分が存在することが申し訳なくて、なるべく当たり障りのない存在であることに全神経を集中していたのだから。死んでしまえば、そういうことを気にする必要もない。幽霊はフワフワ浮かんでいれば済むのだから、気楽なものだと思った。  そんな俺が、一体何故生き返ってしまったのだろう? 神様が俺を生き返らせたのなら、全然意図がわからない。何かやり残したことがあるのだろうか? 俺が成仏するために、やるべきことが。 ◇  死ぬ前は目立たないように気を使っていたが、生き返ってしまった今は、目立たないようにするどころか、知り合いに見つかったらアウトだ。どうしたものかと考え、とりあえず変装しようと思い至った。  神様はどうやら、俺に何かをさせるための軍資金として、ポケットに幾ばくかの金を入れておいてくれた。何しろ、生きていると、それだけで金がかかる世の中だ。神様ありがとうと思いながら、紙幣を握りしめ、俺が普段絶対に入らないような服屋にとりあえず入ってみることにした。  普段の俺は、シャツにセーターとか、カーディガンとか、そういう如何にも大人しい高校生が着そうな服を着ていたが、適当に入ったこの店には、鋲が付いたライダースジャケットや、裾がボロボロの安全ピンだらけのTシャツが吊るされていた。どうやらパンクロックをイメージしたブランドらしい。  Tシャツには英語で「俺達に明日は無い」とプリントされていた。俺にとっては死んでいるのだから当然だ。なんとなく気に入ったので、そのTシャツと、ついでに黒のダメージジーンズ、ラバーソール、それとサングラスを買った。おっと鋲付きのチョーカー(首輪)も忘れちゃいけない。
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