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地元の高校を卒業して東京に出て、今こっちの大学に通っている。
障害者が、それも女の子が親の庇護のある地元を離れて東京に出るのは珍しい。私もずいぶん親に反対された。
でも、どうしても東京に出て行きたかったし、どうしても大阪を離れたかった。
勉強をして自立した一人前の大人になりたいというのも、もちろんある。
だが、それよりも東京に出れば〝ツキ〟が変わる、そんな気がしていた。何か奇跡のようなものが起こって、人生がひっくり返ってくれるのではないかと期待したのだ。
そんな大逆転のようなものは起こるはずはないのだろうけど。
PL時代からの清原ファンの父親が酔っぱらうとよくカラオケで長渕剛の「とんぼ」を歌っていたが、正直あんな古臭い曲、好きでもなんでもなかったけど、あの歌詞は子供の私でも分かると思った。
東京もんには分からんだろうけど、地方のもんには身に染みて良く分かるのだ。
父も母も私が一度言い出したら聞かない事は良く分かっていた。
それに、静も東京に出る、一緒に暮らすということになり、ようやく許可が出た。
静は両親共に亡くなっていて、おじさんの家で暮らしていたが、そこであまりうまくいっていなかったらしい。
私の一緒に東京の大学に行こうという誘いに快く乗ってくれた。
こうして何とか大嫌いな大阪を出て、〝花の都大東京〟に行く事ができたのだった。
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