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僕がこの大学界きっての名門ラグビー部に入って七ヶ月が立つ。
さすがに層は厚くて、今年はまだ公式戦に一試合も出場できていない。
高さとスピードには元々自信があって、足りなかった筋力も猛練習のおかげで、この半年でだいぶついてきた。
あとは判断力を磨くようにと監督からは言われている。
試合ではプレーの一つ一つで局面がガラリと変わる。そこで判断のスピードを上げて、的確なプレーを選択しなければならない。
そこが少し苦手なのだ。
「そりゃ、勇司の頭が悪いから仕方ないんじゃないか」
同期の田丸は、そう言ってからかう。
それを受けて僕も笑いながら、しゃらくせい! と言わんばかりにタマの鳩尾を殴る真似をするのだが、正直に言うと〝頭が悪い〟と言われるのは好きではない。
子供のころ散々そう言われていじめられたからだ。
もう一つ苦手のものがある。
それは女の子だ。
うちの部には新聞や雑誌に取り上げられたこともあるスター選手もいて、休日には練習場にも女の子がやってくることもある。
だから、レギュラー選手でなくても、それなりに女の子にモテる。
あのタマですら、彼女がいるのだ。
よくまあ、こんなのと付き合う気になるなと感心するくらい、むさい男でも、ラグビー部員というだけでモテるのだ。
だけど僕はダメだった。付き合うどころか、近くに寄ることもできない。
何故かって?
怖いのだ。
女の子が僕のことをどう思うか、それを考えると怖くて仕方がないのだ。
見かけはそれほど悪くはないらしい。
自分では自信がないから良く分からないが、タマの彼女の綾ちゃんはそう言う。
背は高すぎるくらい高いし、それに伴い手足も長い。
同じフォワードでもタマと違い、ポジション的に体重よりも背の高さが優先されるので、それなりにスマートだ。
顔も十人並みだから自信持っていいよと言うけれど、タマを選んだ綾ちゃんにそう言われても、あまり信用できない。
「後は積極性だ。勇司は名前負けしているよな。勇気を持って女の子の所に行けよ」
タマは他人事だと思って気楽に言うけれど、僕は女の子と話をすることができない。
これは奥手だからとか、シャイだからとか、そういうことではない。
文字通り話をすることができないのだ。
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