出会い

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 女の人が振り向いた。風の無い部屋で、ブラウンの髪がふわりと浮いた。その顔には、ちょっと心配そうな表情が浮かんでいる。 「そ、その……名前、聞きたいと思って……聞かせてくれませんか?」  女の人は、一瞬考えた後、にっこりと微笑んで答えた。 「エミナです。エミナ=パステル」  エミナはそう言うと部屋を出て、もう一回僕に微笑んで見せてから扉を閉めた。 「エミナさん……か……綺麗な名前だな……」  僕はぼんやりと、天井に呟いた。  そして、暫くぼーっと、放心したように天井を眺め続けた。 「……なんでだろ」  何故かと思う事は色々とある。僕は何故無事なのか。僕に何が起きたのか。僕はどこに居るのか。 「ああ、そうだ!」  僕は、相変わらず違和感のある甲高い声で叫んだ。 「スマートフォン……確か、荷物は籠に入ってるって言ってたっけ」
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