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僕は、背の低い棚の上に置いてある、細い蔓を編んで作られているのだろう籠に目をやった。
そして、ベッドから這い出て籠の所まで歩いていき、籠を覗いた。
確かに自分の着ていた衣類が入っている。
「洗濯してくれたんだ……あれ?」
ふと、自分が半袖にスカート姿なのに気付く。さっきのエミナさんの服だろうか。やけに下半身がスースーして違和感があると思った。
「あった」
半ズボンのポケットの中にスマートフォンがあった。電源を入れてみる。画面にはいくつかのゲームアプリのアイコン、それと、ツイッターや掲示板専用ブラウザのアイコンが表示されている。間違い無く僕のだ。
「ええと……誰かに電話を……圏外?」
3G通信もWifiも圏外らしい。
「参ったな……」
部屋の中をうろうろしてみるが、電波のある場所はどこにも無い。
「今時どれも使えないなんて……」
適当にブラウザを開いたり、電話をかけたりしてみたが、やはりどれも繋がらない。ここは相当な山奥なのだろうか。
「警察、呼んでもらおうかな?」
電波の全く無いような所だと、自力で帰れるかどうかも怪しくなってくる。自殺の事でなにか言われるかもしれないが、背に腹はかえられない。黙っていれば分からないかもしれないし。
「体も殆ど怪我してないみたいだし、大丈夫かもしれないな……うん!」
良く分からない理論で良く分からない自信を持ってしまった瞬間、突然、別の不安が復活してきた。自分の体の事についてだ。
あんな高い所から落ちて無事でいられるわけがない。
そもそも何故、僕は生きているのか。何故、無事なのか。飛び降りて生きていた人の話は聞く。が、その話はどれも、死にきれなくて後遺症を患ってしまった人の話ばかりだ。
少なくとも、馬車の荷台から振り落とされないように掴まる事は出来たのだ。そんな事が出来るくらい怪我が無いなんて、有り得ない。
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