魔法

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「やだぁ! 美味しいですって。じゃあ、次、パン食べて。ここで取れた小麦を使ってるのよ。ああ、あと、実はハチミツもあるの。今、出して来るから」  椅子から立ち上がろうとする女性を、エミナが肩を押さえて制止する。 「ちょっと、母さん……ごめんなさい、記憶が混乱しているのに、こんなに騒いで」  この人は、どうやらエミナさんの母親らしい。とすると、その隣に座っているのはエミナさんの父親だろうか。 「驚かせてすまないね。私はシュー=パステル、エミナの父親だ。こっちは女房のリィンだ」 「初めまして。私はリィン=パステル、エミナの母親よ。エミナも、お父さんも、ロビンも、普段そんな事言ってくれないから、とっても嬉しいわ」  リィンさんがにっこりと微笑んだ。 「母さんったら、すっかりいい気分になっちゃって……」  エミナさんはリィンさんとは逆に、苦笑いしている。 「ええと……ロビンって?」 「ロビンはエミナの弟だよ。今は友達の家で遊んでるみたいだけどね」  シューさんが、豆をパクつきながら言った。 「もう、ロビンったら。夕飯の時くらい帰ってきたらいいのに」  エミナは不機嫌そうだ。 「そういうもんなんだよ。あの年頃の男の子って」 「そうなのかしら……って、こんな話してもしょうがないわよね。そうだ、そろそろ名前、教えてくれない?」  エミナが急に僕の方を向く。僕は頷いて、言った。 「えと、初めまして、桃井泉輝( ももいみずき)です」 「モモイミズキさんかぁ……よろしくね、モモイミズキさん」 「モモイミズキか、この辺りじゃあ聞かない響きだなぁ」  エミナさんとシューさんが、苗字と名前を繋げて呼んだ。 「ええと、桃井が苗字で、泉輝が名前なんです。苗字って言うのは……」 「ああ、苗字。じゃあミズキさんか、いい名前だね!」  シューさんが言った。苗字と名前の事も通じないだろうと思って解説し始めたが、通じていたらしい。 「あ、そうなんです」 「じゃあミズキさんって呼ぶね。何歳なの?」
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