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「やだなあ父さん、このくらい出来るよ。本当に最小限の火の球じゃない」
「いやいや、苦手な属性の魔法をノンキャストで使えるなんて、中々出来るもんじゃないぞ」
僕はぽかんと口を開けた。魔法をどうのこうのと、目の前でナチュラルに話している。
手品でも使ったのかと思ったが、この感じだと、そうは見えない。という事は、魔法は本当に存在するのか……。
それとも、皆で僕をからかっているだけだろうか……この人達が手品を魔法だと思い込んでいるという線も有り得なくはないけど……。
「あ、そういえば、ミズキちゃんは、魔法、使えるの?」
「え……」
「おお、そうだな。使えるか使えないか、使えるとしたらどんな魔法が使えるかが分かれば、どこから来たのかの手掛かりになる」
「ええ……魔法って……ええと……まず、そもそも、魔法って存在するものなんですか?」
「うん? 存在する?」
「どういう意味?」
「どういう意味って……」
僕は困ってしまった。どういう意味もなにも、そのままの意味なのだけど。
「……いや、なんでもない。ちょっと記憶が混乱してるみたいで」
今の反応を見れば分かる。この人達は、本当に魔法を信じている。
「そうか、それも分からないのか……そうだ、鏡は見たのかい?」
「え?」
「自分の顔、見れば何か思い出すかもしれない」
「ああ、確かにそうですね」
僕が相槌を打つと、エミナさんは懐から手鏡を取り出して、僕に手渡した。
「はい、これ」
「ああ、ありがとう」
僕はそれを受け取り、自分の顔を見てみた。
「あっ……!」
見た途端、僕は思わず赤面した。
(か、かわいい……)
「……どうしたの?」
怪訝な顔でこちらを見ているエミナに、僕はぶるぶると激しく首を振った。
「い、いや、何でもないよ」
これが僕なのだろうか。大きい目はクリッとしていて、エミナさんより少し幼く見える。
そして、今まで気付かなかったが、なんと髪はピンク色をしている。この人達は、こんな色の髪の毛を見て何とも思わないのだろうか。
「髪はピンクですね」
「そうねぇ、可愛いピンク色ねぇ」
「薄いピンク色……かわいいね」
リィンさんとエミナさんがニコニコと笑っている。特に何も思っていないらしい。
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