日常の終わり

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 ――遠い昔、この世界は邪悪な魔王によって支配され、魔物達が跳梁していました。  そんな中では人々は、ただ力の強い魔物に従うしかないのでした。  ある者は一生を魔物の爪磨ぎに捧げ、ある者は体を肥やされて喰われました。勇敢な者は武器を持ち抵抗しましたが、一瞬にして肉を斬り裂かれて死んでいきました。  魔王は大きい四本の角、鋭い牙を持つ二つの口、頑丈な漆黒の体、強力な魔力を持ち、大勢の手下を従えていました。  その強大な力で人々を服従させ、支配していたのです。  しかし、それでも抵抗をする人々は途絶えませんでした。人々は完全に希望を捨てる事は無かったのです。  ある時、天から光の力を授かった者が現れました。  その者は魔王に匹敵する魔力を備えていて、果敢に魔王に立ち向かいました。  戦いの中で、その者はいつしか「勇者」と呼ばれるようになり、仲間と出会います。  元気いっぱいのエルフ、若き龍、そして、美しき巫女。  勇者は幾多の魔物、幾多の試練に立ち塞がれましたが、三人の頼もしい仲間と共に立ち向かいました。  そして、勇者は遂に魔王の元に辿り着き、魔王を追い詰めました。  しかし、追い詰められた魔王は最後に残った力を放出し、大地を引き裂き、砕き、滅ぼしてしまいました。  人々が、動物が、そして、魔王自身の率いる魔物もが命を絶たれようとした時です。  四つの力が魔王の力を遮りました。  それは、勇者達四人の力。勇者達は魔王を封印するために力を使っていましたが、一人でも多くの生き物を守ろうと、更なる力を発揮したのです。  しかし、それは、勇者達の願いを叶えるには、あまりにも非力な力でした。  世界は闇に包まれました。  しかし、勇者達の力は消えませんでした。勇者達の願いは闇を光に変え、荒れ地を草原に変え、悲しみを喜びに変えたのです。  そう。世界は救われました。 「――その時に出来たのが、夜に天を包む邪光(じゃこう)のカーテンだと言われてるのよ」  腰辺りまである長い髪を風になびかせながら、少女は自分を囲んでいる子供達に話している。 「夜に出る、赤紫と青紫の奴だよね!」  一人の子供が手を上げた。 「赤紫ってか、桃色っぽいよな」 「薄いピンクっぽいよ」 「てか、ぼやけてるから、よく分かんねーよ」 「うふふ……」  話している少女がくすりと笑い、続けた。
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