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「さ、遠慮せずに食べていいのよ」
「あ、はい」
(箸が無いなぁ……)
僕はそんな事を思いながら、フォークとナイフを手にした。
「うーんと……」
取り敢えず、フォークで魚の身を抑え、ナイフで骨の辺りを切ってみた。
魚を開いて、骨の無い上の身と、まだ骨が付いている下の身に分けた。
そして、下の身に付いた骨は、手でつまんで、骨と身を剥がすように取り除いた。
ナイフとフォークでも、案外綺麗に取り除けるものだ。
「あらぁ!」
リィンさんの歓声が部屋内響く。
「上手いもんだな」
「漁村の人って、みんなこんな風に魚を裁けるのかな?」
ショーさんとエミナさんも、まじまじと僕の皿に乗った秋刀魚を見ている。
「そ、そうかな……」
「ここは海から遠いから、中々お魚が手に入らないの。でも、こんなに上手く魚を食べられるなら、きっとミズキちゃんは漁村の人よ」
「私もエミナと同意見だな。記憶が落ち着いたら漁村に行くといいかもしれない。何か思い出すと思うよ」
「そうですか……そうかもしれないです」
日本は島国だから、当たらずとも遠からずといったところかもしれない。
そういえば、ここが日本だか外国だかも良く分からなくなってきた。外国だとしても、異世界よりかはマシだが……。
「ただ、私は漁村へ行った事があるけど、そんな服は見た事が無いんだよなぁ……」
「え?」
「服装自体はシャツとハーフパンツなんだがね」
「ハーフパンツ……? ああ、ちょっと大きいからかな」
女性の体になったせいかは分からないが以前より服が緩い。人から見ると、ダボダボに見えて、男の時とは違う格好に見えてしまうかもしれない。
「確かに、ちょっと、ダボダボかもしれないです」
「いや、そうじゃなくて、その柄とか、下のズボンとかがね」
「柄?」
「そう。古代文字みたいな柄をしてる」
「そういえば見た事無いわ、私も」
エミナさんがTシャツの柄をじっと見始めた。
「そうなの? まあ……僕も英語は苦手だけど……」
「そのズボンも気になる。シルクに似てるけど、少し違う気がするんだ」
「えと……」
僕は体をくねらせて、お尻の辺りに付いている、半ズボンのタグを見た。
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