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エミナはワムヌゥの背中を撫でながら、ゆっくりとワムヌゥに体を預け、抱き着いた。
「でも、もう大丈夫だから。驚かせてごめんね」
ワムヌゥの動きが、徐々に緩やかになっていく。
「……もう大丈夫だね。でも、一体何が……あ……!」
エミナが荷台の方を見ると、散乱した積荷と一緒に一人の女性が地面に横たわっていた。
(うん……?)
僕が目を開けると、まず目に入ったのは木目だった。木の天井が、前にある。
(ここ……どこだ……?)
横になったままで部屋を見渡す。
(へぇ……)
ベッド、机、椅子、棚など、家具の殆どが木材で出来ている。床も天井も木だという事は、木造の家なのだろうか。
(雰囲気あるなぁ)
表面だけ木の柄の可能性もあるが、それは触ってみないと分からない。どちらにせよ、新鮮な気分だ。
木の匂いも漂っていて、心が癒される。どこかのキャンプ施設だろうか。だとしたら、ちょっといい所を見つけたかもしれない。偶に来て、のんびりしたい場所だ。
――ガチャ。
不意に扉が開いた。
「あっ……!」
僕はびっくりして、思わず上半身を起き上がらせた。
「あっ、すいません。起きてるって思わなくて……」
扉の先には見知らぬ女の人が立っている。歳は僕と同じくらいだろうか。
「い、いえ、大丈夫です。僕もここが何処だか分からなくて困ってて……ふえっ!?」
僕は驚いて、思わず変な悲鳴をあげてしまった。僕の声じゃない。
「え……ええ? あっ、あっ、ああー……」
妙に甲高い声が自分の口から出ている。一体、どういう事だ。
「ど、どうしました!?」
女の人が驚いた。僕が悲鳴をあげてしまったからだろう。女の人は、内股になって、握り拳を自分の胸に押し付ける様にして、オロオロしている。
「あ、ご、ごめんなさい。その、ちょっと混乱してて……」
状況が全く分からないし、この女の人もびっくりしている。変な事を言ったら更にややこしい事になるかもしれない。ここは一先ず、声が妙に甲高い事は黙っておく事にした。
「ああ、そ、そうですよね。あんな目に遭ったんだし、記憶だって混乱しますよね」
女の人はオロオロしながら言った。
「……あんな目?」
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