孤独な旅路の果てに

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 あちこちの町を渡り歩き、流れ流れて……俺は、この町へとやって来た。  見渡してみると、どうにも暗い雰囲気だ。潰れた工場や、汚ねえ木造の家ばかりだよ。外を出歩いているのも、しけた面した奴ばかりだ。みんな、俺を見てビビってやがる。本当に気に入らねえな。 「おい、何見てんだよ。俺の顔に何か付いてるか?」  頭に来た俺は、通りで目が合った奴に言ってやった。すると、そいつは目を逸らしやがったんだ。俺はムカついたから、ぶん殴ってやったよ。そしたら、ヒイヒイ泣きながら逃げていきやがった。 「ケッ、根性無しが」  尻尾を巻いて逃げていく後ろ姿を見ながら、俺は一人で毒づいた。いっそのこと、この町にいる奴を全員ブッ飛ばしてやろうか。俺が睨み付けるだけで、みんな尻尾を巻いてこそこそと居なくなる。いい気味だぜ。  俺はイライラをぶつけるように、そこらに居た奴を片っ端からぶん殴ってやった。どいつもこいつも、俺のパンチ一発で吹っ飛び、呆気なく逃げて行きやがる。この町にも、俺とまともにやり合える野郎はいねえのかよ。  だらしねえ連中だぜ。  だが、そんな俺の前に奴が現れた―― 「おい、見かけねえツラだな。てめえか、この町で騒ぎを起こしてる新入りってのは?」  突然のっそりと現れたそいつは、俺に向かい低い声で尋ねる。 「ここで何しようが、俺の勝手だろうが。てめえにゃ関係ねえ。なんなら、てめえもブッ飛ばしてやろうか」  言いながら、俺はそいつを睨み付ける。  だが、俺の勘は言っている。目の前にいるのは、今まで会った中でも最強の強者だと。体の大きさ、筋肉の付き方、目から発している闘気……。  俺は思わず、その場から飛び退いていた。間合いを離し、低い姿勢で構える。目の前にいる男は、数々の修羅場を潜ってきた本物の強者だ。  だが、俺は怯まずそいつを睨み付ける。  上等じゃねえか。  俺に勝てる奴なんか、いやしねえ。  すると、そいつはニヤリと笑った。 「てめえ……どうせ、世の中で自分が一番不幸だとでも思ってるんだろうが……だから、あちこちで暴れてやがるんだろ。本当にひねくれた奴だな」 「んだと! てめえなんかに何が分かる!」  俺は、思わず吠えていた。俺の気持ちが、こんな奴に分かるはずがないのだ。  だが、そいつは平然とした表情のままだ。ビビる気配なんか、ありゃしねえ。
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