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「てめえなんかに、何が分かる……俺は負けられねえんだ。俺は喧嘩で負けたら、何も残らねえんだ!」
そいつを睨みながら、声を振り絞る俺。
そう、俺には何も無いのだ。
喧嘩で負けたら、俺に何が残るんだ?
俺は、ただの醜く弱いクズでしかねえ。
すると、そいつはため息をついた。
「そうかい。だがな、そんなのは俺の知ったことじゃねえよ。お前には付き合いきれねえから、帰らせてもらうぜ」
「んだと……待ちやがれ。まだ、終わってねえぞ」
俺はふらつきながらも、そいつに向かって行こうとした。だが、体が思うように動かねえ。二・三歩進んだだけで、無様な姿で地面に倒れちまった。
駄目だ。
もう、一歩も動けねえ。
倒れている俺を、そいつは涼しい顔で見下ろしている。
やがて、そいつは口を開いた。
「明日の夜、この先にある真幌公園で集会をやる。もしお前が、俺たちの仲間になりたいなら……その集会にツラを出せ。仲間になる気がないなら、この町からさっさと消えろ」
「えっ……」
そう言ったきり、俺は何も言えなかった。想像もしなかった言葉を聞かされ、ぶったまげて全身が硬直していたのだ。
どういうことだよ?
仲間に入れてくれるのか?
この俺を、仲間に?
醜い顔の、俺を?
「お前、聞いてんのかよ? 大事なことだから、もう一度言うぞ。この道を真っ直ぐ行くと、真帆公園って場所がある。でっかい池のある公園だ。そこで明日の夜、俺たちは集会をやる。もし、お前に仲間になる気があるなら、その集会に参加するんだ。仲間になる気が無いなら、この町から出ていけ。言いたいことはそれだけだ」
そいつは向きを変え、立ち去ろうとした。
俺は、慌てて呼び止めた。
「ちょっと待ってくれよ!」
すると、そいつは立ち止まった。面倒くさそうな表情を浮かべ、ゆっくりと振り向く。
「何だよ。まだ、やられ足りねえってのか? 続きはまた今度にしてくれや。俺は腹が減っちまったよ。まあ、どうしてもって言うなら付き合うけどな」
言葉と同時に、そいつはのっそりとこちらに歩いて来た。
俺は慌てて首を振る。これ以上、奴のパンチやキックを食らったら死んじまうかもしれない。俺はまだ、死ねないのだ。
奴に、聞かなくちゃいけないことがある。
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