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「違うんだよ! あんたに聞きたいことがある!」
「はあ? いったい何だよ?」
「あ……あんたの名前を教えてくれ!」
俺の問いを聞き、そいつはニッコリ微笑んだ。
「俺の名はアレクサンダー……通称アレク。ここいらを仕切ってる、ボス猫だよ」
「あんた、ボス猫だったのか」
「ああ。ところでなあ、一つ覚えておけ」
そう言うと、アレクはこちらに近づいて来た。何をされるんだ? 俺はビビりまくり、思わず耳をふせる。
だが、予想に反してアレクは何もしなかった。
「人に名前を聞く時には、まず自分が名乗るのが礼儀だ。お前、名前は?」
「ニャ、ニャンゴロウだよ」
「ニャンゴロウ、か。いい名前じゃねえか」
言いながら、アレクはもう一度笑った。
とても、とても優しい笑顔だった……。
何て優しい笑顔なんだ。
あんなに強いのに……。
こんなに優しく笑えるのか。
勝てないはずだよ。
俺の完敗だ。
気がつくと、俺はアレクの前で耳を後ろにふせ、うずくまっていた。生まれて初めて、自分から認めた敗北の姿勢だ。しかし、気分は悪くない。むしろ、心地いい気分だ。
「ニャンゴロウ……またな。お前が集会に来てくれるのを、俺は楽しみに待ってるからな。仲間になっても、お前の挑戦は受けてやるぜ」
アレクはそう言って、悠然とした態度で去っていった。
その後ろ姿を、じっと見つめていた俺……不意に、視界がぼやけてきた。
とうとう見つけたんだ。
俺の仲間を、そして居場所を。
あれ?
これ、涙か。
俺、泣いてるのか。
知らなかった。
涙って、こんなに暖かいものだったんだな……。
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