悲鳴

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 女王の首がごとりと音を立てて床を転がる。ゆっくりと回って覗かせたその表情は、ライエルが今日まで見てきた罪人たちの表情とは違うものだった。  首から血を滴らせるその顔は、穏やかで、しかし悲しみが滲んでいる。  その表情が全てを語っていた。死は救いではないと。どれだけ死を受け入れようと、決して救われることはないのだと。 「陛下が命じ、私が殺した。彼らへの贖罪は陛下の命によって成された」  ライエルが斧を手放す。激しい音を立てて斧が倒れた。 「血を流すのはあなたで最後だと、そう仰られた」  おぼつかない足取りで、女王の体を避けて部屋の中央にある椅子に向かう。 「それは誤りだ。罪と向き合い続けた女王を手にかけた男がまだ残っている」  椅子の横。そこに立てかけられたままの女王の愛剣へと、ライエルが手を伸ばす。 「陛下が命をかけて王弟殿下へ引き継いだ国。その行く先を私も見てみたいと、そう思いました」  ライエルが剣を鞘から引き抜く。 「私も未来を望みます。未来に期待を抱く私の命は、貴方への贖いに足るものでしょうか」  細剣の刃を喉元に押し当て、ライエルが息を深く吸い込む。  ライエルの顔に浮かぶのは最早死人の顔ではなかった。女王と同様、未来に思いを馳せ、未来に至れぬ己を悔やむ。  少し悲しげな、血の通った穏やかな表情のままに、ライエルは己の喉を引き裂いた。
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