悲鳴

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「何を……なぜ、私なのです。私には……」  ライエルが言葉を切る。それを言葉にしてはいけないと、言葉を飲み込まずにはいられない様子だった。言葉の続きは待たず、エリオットはライエルの足元にある墓に目を向ける。 「その墓は?」  小さく土が盛られただけの墓標。それを一瞥して、しかしライエルは答えない。 「それは、あなたがこれまでに処刑した者たちの墓ではないのか?」  エリオットが問う。はじかれたようにライエルが顔を上げた。その表情には一瞬にして、憤怒と悲嘆と狂気が入り混じる。 「だったら何だと言うのですか! 私は彼らを救った! もうこの世で罪を重ねなくとも良いのだと、彼らは皆、歓喜の悲鳴を上げてこの世を去った。だから私は彼らに祈るのですよ!」  滅裂な言葉。からからと壊れたようにライエルが笑う。視線はエリオットを捉えてはいない。狂人のように視線を彷徨わせる。  その姿を、言葉を、エリオットは正面から受け止める。  ひと月前、女王は言った。正気ではできないことばかりなのだと。処刑した者の娘が傍に必要だったのだと。だからエリオットは確信する。 「あなたしか、居ないのだ。私では無理だった。姉上を、どうか。貴方も救われるはずだ」  震える声で、頬を伝う涙で、エリオットが懇願する。ライエルの視線が、目の前の男を静かに捉えた。ライエルの瞳にエリオットが確かに映り込む。 「……私も、救われる」  ライエルがまだ熱の残る声音で呟く。  そして、エリオットの懇願を受け入れた。
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