第1章

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くぅちゃんは不思議な猫だ。 大抵の野良猫は、人の姿を見かけると逃げ出すか、餌をくれるかと期待して、ある程度の距離をとって、こちらの様子を窺う。 けれども、くぅちゃんはそんなことをしない。 ただ、私の事をじっと見つめる。それだけ。 私から近寄っても逃げ出さないけど、くぅちゃんから近寄ってくる事は一切なくて。 それで、撫でてあげると喉をゴロゴロと鳴らしたり。 餌を期待してるわけでもないようで、私の鞄に興味を示すこともない。 人懐っこい猫なのかな?と、思えば、前に小さな子供が近寄っていった時は逃げていたし、女子高生がソーセージをちらつかせながら近寄った時には、必殺猫パンチを繰り出していた。 私に対しては寛容だけど、他の人には容赦ない。 私にだけ心を開いているのか、ただ、なんとなくなのか。 猫を飼ったこともない私には、猫の気持ちなんて分からない。 ただ、もし、私と一緒にいるのが心地いいのなら、ちょっと嬉しい。 忙しない毎日の中。 くぅちゃんと過ごす僅かな一時は、私の数少ない癒しだから。
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