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美しい月夜の夜に、しんしんと粉雪が舞い散り庭を白銀の世界へと変えていく。
静まり返った庭に女性の悲鳴が鳴り響く。
「きゃー、誰か来てー」その声を聞いた。
この屋敷の主で、夫である辰巳は寝室で椅子に深く座り物思いにふけっていたところに悲鳴が聞こえて来た。
慌てて辰巳は、悲鳴の聞こえて来た庭へと走った。
そして、辰巳の目に映ったのは新妻の千里の倒れている姿だった。
千里は、白い雪の上に点々と真っ赤な血で道を作り。真っ白い寝間着に身を包み下腹部のあたりが血で真っ赤に染まっている。
まるで真っ赤な椿が花開いているかのように見える。
辰巳は我が妻の倒れている姿を見て驚く。
そして一言つぶやく。
「ああ、千里これは・・・」辰巳は先ほどの千里との会話を思い出していた。
辰巳はこの一帯を牛耳る商家の長男であり跡継ぎだった。
恰幅の良い男前の辰巳に言い寄る女は数多くいたが、辰巳はそんな女たちには目もくれずに一人の可憐な少女を娶ることにした。
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