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兄弟揃って同性愛だなんて、普通なら受け入れてもらえないだろうし、喜ばしくないと思っての言葉だった。
けれど、打ち明ける以外に無いのだと、福祉司の試験に臨む中、両親の事を思っては葛藤しつつ、決心は更に固まっていた。
「はははっ!一司にしてはえらく気遣ってくれるものだな!けどそれは一哉の事である意味免疫が出来たからなぁ!詩子もそうだろう?」
心配を余所に父は全てを笑い飛ばす様子で、母に視線を送った。
「……まあ、免疫というか…人を愛するのには様々な形がある事は理解出来るようになったわね」
父の隣に座る母は厳しい表情をしながらも、嫌悪感は露わにはしていなかった。大袈裟な溜め息を吐かれはしたが――。
「一司が悔いなく生きる道なら、それでいい。孫の顔は…まぁ、智史と陽菜には時々会えているし…気にするな。こういった人生もまた悪くない…別に子孫を紡ぐ事だけが役目じゃないんだ」
なんて理解のある父だと思うが、やはり内心は複雑に違いない。
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