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凄く失礼な事を言われてショックだったけど、心の中でその通りかもって納得している自分が居る。だって、私が彼女に勝るところなんてなさそうだもの。けれど、麗美さんは違った。引き下がるどころか、ポカンとしている課長に向かって大声で叫ぶ。
「課長、この人事には、ちゃんとした理由があるんですよね? この自意識過剰な女に教えてあげて下さいよ!」
しかし課長はしどろもどろで「僕が決めたワケじゃないから」と逃げ腰だ。
「もぉ~課長のくせに空気読めないの? ここは、嘘でもそうだって言うところでしょ?」
麗美さん凄い……課長にまで噛み付いてる。
さっきまで強気だったお嬢様風の女性も、麗美さんの迫力に圧倒されたのか、すっかり黙り込んでしまいなんとかこの場は収まった。でもこの一件で、私と麗美さんが浮いてしまったのは確実。だって、それ以降、誰も私達に話し掛けてこなかったもの。
「――ごめんね。麗美さん、私のせいで……」
研修が終了し、駅へ向かう道すがら麗美さんに詫びるが、彼女は相変わらずあっけらかんと笑っている。
「茉耶ちんが悪いワケじゃないんだから謝らなくていいよ」
「でも……」
「そんな事より、明日はいよいよ初出勤。ワクワクするね」
どこまでもポジティブな麗美さんが心底、羨ましい。
「麗美さんってホント凄いね。何に対しても前向きで、私とは正反対だな……」
別にひがんで言ったワケじゃない。素直にそう思って出た言葉だったのに、突然真顔になった麗美さんが立ち止まり、眼光鋭く私を見つめる。
「そんな事ない……私だって昔は……」
えっ……?
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