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「はい、そうです」とだけ答え、また壇上に目をやりシカトしていたのだけど、彼女は意外にフレンドリーだった。
「へぇ~めっちゃ綺麗な肌してるよね。どんなお手入れしてるの? 基礎は? どこのメーカー?」
興味津々って感じで目を輝かせ私の顔を見つめる女性に戸惑ってしまった。だってこの人、笑顔なんだもの。この手の人に、こんな風に好意的に話し掛けられたの初めてだ。
「……特に何も……」
「えぇ~なワケないでしょ~色白でお肌プルプルだよ?」
「あ……化粧水なら、祖母が作ってくれたものを使ってますけど……」
「祖母って……あなたのおばあちゃん化粧品会社の人?」
「いえ、農業してます」
そう、私の実家は代々続く農家だ。六十八歳の祖母は今だに現役で畑仕事をしている。
「農業してるおばあちゃんが化粧水作ってるの?」
「はい、へちまの化粧水です」
社長の声しか聞こえない厳粛な空気が漂うホール内で、突然響き渡る「へちま?」という女性の叫び声。程なく周りから失笑が漏れる。
「あわわ……」
目立つ事が大の苦手な私は、四方八方から向けられる冷たい視線に耐えるのに必死だった。なのに、隣の女性ときたら、全く気にする様子もなく舌をペロリと出して平然と笑っていた。
あっけらかんっとしてる。なんて図太い神経してるんだろう……
私は、自他共に認める超地味子。自分に全く自信がない。ゆえに、この二十二年間、なるべく目立たぬようひっそり生きてきた。だから注目を浴びる事が何よりもイヤ。
お隣さん、お願いだから大人しくしてて……
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