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「お姉ちゃん」
泣きそうな声を出して、私の弟は私に抱きつく。
私はゆっくりとその小さな身体をさすってやる。
「大丈夫、私はいつだって勇太の味方だから」
私の声に顔をあげて、勇太は笑った。
「ぼく、強くなる。お姉ちゃんが味方だから、強くなれる」
それは、勇太が初めて見せた強がりの笑顔だったから、私も歪む世界を堪えて笑ってみせた。
お姉ちゃんだから。
たとえ、遠くに行ってしまうとしても、私はずっと勇太のお姉ちゃんでいたいから。
「勇太ー! そろそろ行くわよー!」
遠くの方でお母さんが勇太を呼ぶ。
私達はもう一度だけ笑って?それから抱き合った。
「勇太、元気でね。いいこにしてお母さんを困らせるんじゃないよ?」
「お姉ちゃんも、お父さんのことちゃんと見てあげてね」
私達の瞳はどちらも潤んでいたけれど、それでもまた会えると分かっていたから。
だって、私達は家族だから。
ちゃんと笑顔でばいばいしよう。
「「それじゃあ、またね」」
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