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彼…セッテは帽子を取ると、軽くお辞儀をした。 今のチンクエにとって彼は助け舟でしかなかった。 セッテはチンクエと同い年であったが、この屋敷に仕える年月は彼女とは比べものにならない程長かったからだ。 無論、彼はシークの『あれ』については知っていたし、慣れていた。 「セッテ!今日も来てくれたのね!」 シークの目の輝きは、先程料理を見た時よりもきらびやかだった。 跳びつく彼女を、セッテは受け止めた。 「わたくしはお嬢様に仕えているお世話係ですよ?来ない時の方が、珍しいですよ。」 「ねぇねぇ、聞かせて、外のお話聞かせて?毎日毎日部屋の中じゃ、貴方のお話くらいしか楽しみがないの。」 そう、シークは毎日部屋の中にいた。 それは彼女が望んでしていることではなかった。 それをよく知らないチンクエは首を傾げた。 それをよく知っているセッテは、斜め上に視線を移しながら、話題を考えた。 「……そう、ですね。んー、外の話になるかはわかりませんけど…、昨日づけで、わたくしの階級が少佐に上がりました。」 同い年で、軍人。 しかも少佐。 セッテのこともよく知らなかったチンクエは、思わず声を上げた。
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