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シナリオを眺めて、ここまで順調にことが進んでいることを確信して頷くとGKONは声をあげた。
「お前たち、何時まで死体やってるんだ。クランクインは終わったぞ」
撮影は全て終えた。
亡霊の仕業に見立てた連続殺人と怪人型犯人の仕業に見立てた連続殺人の対決に巻き込まれた人間たちの様子を描いたサスペンスホラー"幽閉館殺人事件対デッドコンセルジュ"
その撮影の為に、山中に館型のセットを作り、衣装やスタイリスト、フードコーディネータに俳優や女優など職種や性別は異なるも、映画の撮影という共通点を持った男女をロケ地に集めた。
撮影中はスマートフォンの鳴動や、部外者がロケ地に入って来ると撮り直しを余儀なくされるため、出来るだけスマートフォンはロケ地の外で管理し、部外者は立ち入り禁止とする必要がある。
シナリオ。もとい脚本をスマートフォンの入力に変更したのは正解だったが。
迅速に確認や修正作業が行えるほか、キャストに漏れなく行き渡るのもあり、コピー代が浮くというメリットがある。加えて撮影そのものもスマートフォンにすることで従来のカメラの欠点も補完出来た。
場所をとり、コードがある為に撮影範囲を制限されるうえ、テープの交換も必要な今までのカメラでは出来なかった撮影が可能になったのだ。
それも踏まえて、そこまでは良かった。
「何時まで寝てんだ、セットかたさなきゃならんぞ」
GKONは再び横たわるキャストたちに声をかけるが、返事がない。
「いい加減に......」GKONがキャストの体を揺さぶろうとすると、今までに嗅いだことのない鉄のような臭いが鼻孔を掠めた。
「違う、特集メイクの塗料の臭いじゃない、これは、血の臭いか」
ロケ中にキャストが誰かに殺害されたとGKONは直感する。すぐさまスマートフォンから110へ通報すべく指を構えるが、彼の出先にはキャストの血がべっとりとついていた。このままでは疑われてしまう。
「畜生、撮り直しだな」
意を決し、110番に通話をかける。
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