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潤が出た。
まさか、出るとは思わなかったので、驚いてしまい、すぐに言葉が出てこなかった。
『もしもし』
潤が再び言う。ふと我に返り、
『あー、もしもし。仕事中だった?悪いね。今日大丈夫そう?』
焦ってしまったせいか、少し丁寧な口調になってしまった。まあ、潤ならそういうところには、気づかないだろうと思っていたが。
しかし、少し間があった。
あれ?と思った時だった。
『だ・じょ・・・ぶ。21時・・・だ・ね。』
潤が電話越しで答えているが、後ろの音がうるさくて全く聞こえない。
どうも会社ではなさそうだ。
『後ろがうるさくて聞こえないわ。今出先?』
さっきからゴォーゴォーと聞こえてくる。しばらくすると、なっていた音が消えた。
それでも、やたらガヤガヤうるさい。
『ごめんごめん。今ちょうど電車降りたところ。今日はこれで終了だから、二十一時に行けるわ』
まじか。心の中で三人で飲める楽しさと、朝までかよと思う、ちょっとめんどくさい気分になった。しかし、
『さすが。じゃあ、バグるぐらい飲むか。』
笑いながら言った。久々だし、仕方ない。朝まで付き合うか。
覚悟を決めた途端、最近あまり味わえなかった何かを待ち望む子供のような感覚を覚えた。
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