Scene6

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この三人での飲み会は何歳まで続けられるのだろうか。そんなことをふと思うと自分の現状と潤と義博の現状を比べてしまう。 一人は、デキ婚とは言え、20歳という若さで家庭を持ち、 大変といいながら幸せそうな顔をしている。 もう一人は、大学院まで行き卒業後は、大手の電機メーカーの開発部門に就職。 週休2日で残業も月に20時間程でありながら、月収は申し分ないほどもらっている。 それに比べ自分は、大学を卒業し、百貨店の社員に就職。 本当は安定した金融関係の仕事に就きたかったが、 自分は、企業から必要とされなかった。 どこでもいいから就職をと思い、最後に受けたそこそこ大きい会社に たまたま受かっただけの話だった。 それなりに大きな会社であるから、普通なら、会社の役員を神のように崇め、 お告げのごとく内容を聞き入れ、今後の自分の出世を夢見て心を奮起させる。 また、親も、就職氷河期と言われた時代に就職できたことが嬉しかったらしく、 やたらと会社のいいところを見つけては褒めて、頑張りなさいと言っていた。 自分は、とりあえず会社にも親にも、持ち前の愛想を振り撒き、 頑張るアピールをオーバーにしていた。 しかし、内面は、特にやりたい仕事ではなかったため、毎日が退屈で仕方なかった。 最初の一ヶ月はその年に入社した同期と新入社員教育を受け、 その後それぞれ店に配属となった。 自分は、埼玉県の戸田市にある百貨店の紳士服の売り場の配属となった。 給料をもらっている以上、一応無難に仕事はこなしていた。 昔から効率は良かったせいか、言われたことはそつなくこなせた。 仕事を覚えるのが早いと、たまに上司に褒められたりもした。 まあ、褒められればそこそこ嬉しいが、それでもやっぱりふとした瞬間に なぜこんなことをやっているのだろうと思っていた。 その思いは、2年目に突入してからも、変わらなかった。 そんな時、高校時代のよく可愛がってくれた一つ上の先輩とばったり会った。 就職してから2年目の秋のことだった。
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