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『なんだよ、翔かよ。びっくりさせんなよ。かぁー、もったいないことした。まだ吸い始めだったのに』
口にくわえていたものが煙草であることは見えなくても普通に気づく。
なんせ匂いが充満している。
教師だと思って消したつもりだが、本当に教師がきていたらどの道バレて停学処分だろう。
『もしかして、入部?』
そう言いながら、カバンの中から再び煙草を取り出し吸い始めた。
『あ、煙草吸ってみる?』
初対面であったが、そんなことお構いなしに、悪事を勧めてくる。
ちょっと面白い感覚をしている人だなと感じていた。
不思議と魅力を感じるその先輩こそが哲也さんである。
『哲也さん、マジで久しぶりですね。』
髪こそは、明るめの茶髪であったが、指が通りそうな程でっかいピアスは健在していた。
それを見た時に、さすがにその耳で社会人はやっていないだろうと感じていた。
その気持ちは、安堵のような少し嬉しいような気持ちになった。
『何年か前に飲んだ振りか。スーツなんて着ちゃってよー。一端のサラリーマンやってんのか?あの真一がまさかこんなピシッとなるとはなー。』
哲也さんは、社会人である自分を何処か蔑むような感じでニヤニヤしていた。
今の自分の状態がどうであろうと、一応は、社会人としてやっている以上、
何を言われてもそんなに不快にはならなかったが、少し棘があるように答えてみた。
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